『旅には、いつ出ることができるのだろうか。』
そんな不安を抱きながら私の毎日が過ぎていく。
今の自分にできることはなんだろうか。
地球の歩き方をかたっぱしから読み漁り、現地の地図を頭に叩き込むことだろうか。
外務省が提示する、渡航危険レベルをチェックすることだろうか。
過去身に付けた、旅行のテクニックを提供することだろうか。
コロナが落ち着いたときのために今できることはある、そう信じながら考え、
”旅”との関わり方を探った私に見えてきたものをここに残したい。
1.”旅”にこだわりたかった自分
きっとどれも今後のためになる、誰かのためになる。
何もしないのが嫌だから、自問自答の結果、とりあえずやった。
池上彰の本で、世界の宗教と歴史の概要を学んだ。
TRAICYのメルマガで、日々目まぐるしく変わる観光状況に目をやった。
動画を通して、過去自分が身に付けてきたテクニックを提供し発信した。
『本当に”旅行”が好きなんだね』
周りはみんなそう言った。
自分がこだわって発信しつづけてきたつもりだった”旅”。
”旅行”も素晴らしいもの、それでも自分が好きなのは”旅”。
見かけ上同じだからこそ、その違いを伝えたかった。
でも、うまく伝えられていなかった。
『うまく伝えられないのはなんでだろう。』
『結局、同じなのかもしれない。』
ある日ふと、”旅”がなんなのかわからなくなった。
こだわり続ける理由も見えなくなってしまった。
これだけこだわっておきながら、
”旅”という感覚を失いかけてしまっていたのかもしれない。恥ずかしい話だ。
そして、うまく伝えられない自分に嫌気がさして悔しくなった私は、旅にかかわることから少し距離を置くようになった。
『しばらくコロナだから・・・。』
『航空券のルールも観光地の時間も全部変わっているだろうし・・・』
こんな逃げに走りかけるような弱い自分もどこかにいたかもしれない。
2.”旅”を見失った自分が出会った1冊の本
そんなとき、ある本で旅の魅力を再認識することになった。
ガイドブックでもない、写真家の写真集でもない。
ビジネス書からだった。
強い自分だと思っていたのに、
自分で行動できなくなりかけていた自分を変えたくて、自己啓発本をたくさん読んだ。
その時出会った、
という本で、私は”旅”の概念を再構築することになった。
かなりのベストセラーになっているから、このブログを読んでくれている人の中にもすでに読んでいる人もいるかもしれない。
旅の情報はどこにも書いていない、人生に迷った人のための自己啓発本だ。
もちろん、『旅に出ろ』とは書いていない、
ただ、私が『旅』について再認識できた本だから、
”旅行”と”旅”の違いを感じたい人、あるいはすでに感じている人はぜひ読んでみてほしい。
『嫌われる勇気』について書かれていたのはこうだ。
「旅という行為の目的はなんでしょうか?たとえばあなたがエジプトに旅をする、このときあなたは、なるべく効率的に、なるべく早くピラミッドに到着し、そのまま最短距離で帰ってこようとしますか?
そんなものは旅とは呼べません。家から一歩出た瞬間、それはすでに旅であり、目的地に向かう道中もすべてが「旅」であるはずです。 引用:岸見一郎、古賀史健著『嫌われる勇気』
旅行業界にいたからこそ、ものすごく理解できた。
私たちの任務は、『いかに無駄なく、効率よくお客様を目的地へ連れていくことができるか』だったからだ。
もし道中でバスがエンストして目的地にたどり着けなったとき、
”旅行”を求めていた人は目的地にたどりつけなかったことを嘆くだろう。
”旅”を求めていた人は、嘆くと同時に、エンスト事件を乗り越えることを楽しむだろう。
また、予定していた宿がオーバーブッキングで宿泊できなかったとき、
”旅行”を求めていた人は不満を覚えるだろう、日本のサービスの質の高さを思い出すにちがいない。
”旅”を求めていた人も、一時の焦りと苛立ちを感じだろうが、
現地を歩き回って新たな宿を探し、新たな宿でより素敵な時間と出会いを過ごそうという気持ちになるだろう。
”旅”と”旅行”の違いが見えなくなっていたわたしの中に答えが出てきたのだった。
3.今の私が思う、”旅”と”旅行”
旅と旅行では、行く先は同じ、起こる出来事なんてすべて偶然。
旅だからトラブルが起こって、旅行だからスムーズなんてそんなの運。
プロセスすべてを、大切にし楽しむのが”旅”。
そして、そのプロセスをどう感じるかだと思う。
予期せぬことが起こった時、
そのすべてを”価値ある原体験”と捉えることができるかどうか。
数々の苦しい原体験がおとずれるかもしれない、でもそれは旅が下手なんじゃない。
それだけ困難を乗り越えるだけの精神力がつき、自立ある自分へと成長できる梯子を上っているだけなんだ。
一瞬は無駄金・無駄足だと思うかもしれない、でもそれは浪費なんかじゃない。
誰にも感じ取れない自分だけの経験と出会い=見えない財産がどんどん増えていっているだけなんだ。
そう思えたとき初めて、その渡航は”旅”になるのではないだろうか。
そんな気持ちを持つことができれば、3泊5日でも立派な”旅”だといえるに違いない。
飛行機を取る、ホテルを取る、そこまでは旅行も旅も同じだ。ホステルを確保したからと言って、それが旅になるとは限らない。
だから、
出発前~帰宅まで、自分の気持ちを『道中すべて』に向けること、
そして、
道中でのすべての出来事を『絶好の交友と成長チャレンジ』と捉えること、
このように自分の気持ち次第で”旅”にも”旅行”にもなりうるだろう。
仕事が忙しくて時間がないからサクサク廻らないといけないな・・・
こんな理由じゃ旅はできない。
もちろん時間もお金も大切だ。
でも、旅の魅力を高めてくれるものは時間でもお金でもない。自分の気持ちだと思う。
限られた時間の中で、いかに自分が感じるかだと思う。
4.”旅人”としてのこれからの自分
きっと、また迷う日は来ると思う。
これだけこだわっている私だとしても、旅と旅行の違いがわからなくなってしまうときがくるかもしれない。
それでも、過去に感じた経験、そして多くの書籍がもたらしてくれた価値観に沿って
『旅』という体験の魅力を伝える立場になっていきたい。
ワクチンができるまで、外務省のレベルが下がるまで、世界旅行は難しいだろう。
国際レベルで危険とされている地域に足を踏み込んで、迷惑かけるようなことは自分の首を絞めるだけだから。
壁は厚く、時間もかかるかもしれないが、
少しずつ現地でのプロセスを楽しむことができるよう、見えない財産を増やすきっかけ作りができるよう貢献していきたい。
目的地だけではなく、その道中すべてにも関心を持ってもらえるよう、発信していきたい。
日本であれ、世界であれ、旅行ではなく”旅”の魅力に少しでも気づいてもらえるように。